短編小説・「明日へ続く道」 7

手を引かれるままに、健太はスタンドに入った。
入った瞬間、目の前に広がるピッチに目を奪われた。
バスを降りてから、売店の近くに行くまでの間に
チラッとピッチが見えたが、スタンドから見るそれは
まったく違っていた。

予想以上に広い緑色のピッチ。反対側にあるバックスタンド
には、横断幕がたくさん広がっていた。
メインスタンドも、外から見るよりも広く感じた。

先に入場した人たちは、お気に入りの席があるらしく
各所に散らばって座っていたり、荷物を置いて、コンコースへ
食べ物や飲み物を買いに行っているようだった。

「健太、こっちだ。」
礼司は健太の手を引いて、礼司の父親が座っている方へ
歩いていった。
「ここが、俺がいつもいる所なんさぁ。一番見やすいと思ってる
場所なんさぁ。」

メインスタンドの中段で、ペナルティエリアのラインの延長線上。
ゴールシーンも見やすいし、バックスタンドからのコールの迫力が
伝わる場所だと、礼司は力説した。

「父さん、友達の健太。」
と礼司は父に紹介した。

-友達?だったのか?
健太は、思った。

ちょっと遅れて、健太の父が席に着いた。
「ここか?」
「ここが一番良い席なんです。」
礼司は健太の父に言った。

健太の父は、礼司の父に気がつき
「こんにちは。健太の父です。いつも息子が礼司君に
お世話になっております。」
礼司の父は
「いえいえ。うちの礼司こそ健太君にお世話になって
いるようで。」

-なんで大人は、いつもこんな挨拶しかしないんだろう。
健太は怪訝な表情をした。

キックオフまではまだ時間があった。

「なぁ、健太。昼ごはんどうすんだ?」
礼司が聞いた。
「え?何にも考えてない。父さん、お昼はどうするの?」
健太が父に聞いた。
「そういやー忘れてた。買いに行くか。」
「うん。」
「礼司君、ちょっと行って来るね。」
「おじさん、『とりめし』がおいしいですよ。」
礼司が言った。
「そうか。ありがとう。」
健太と父は、弁当を買うため席を立った。

・・・続く

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    Excerpt: 私が、初めて書いた小説。 Weblog: Dreamers Fields ~夢見の部屋~ racked: 2009-01-29 23:40